最高裁判所第一小法廷 昭和42年(オ)1175号 判決 1968年3月28日
上告人
酒寄内蔵
右訴訟代理人
塩田省吾
被上告人
佐藤米子
右訴訟代理人
大村武雄
被上告人
頼玉年
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人塩田省吾の上告理由について。
原審(引用の第一審判決を含む。以下同じ。)の確定した事実関係によれば、訴外山本慶作が訴外川端参次郎から分筆前の原判示九八六番の一の一部であつた同番の五の分筆売渡を受けた当時、訴外山本は同番の五に隣接する九八九番の三を所有しており、右九八九番の三は、さきに同番の一が同番の一ないし三に分筆されたことによりいわゆる袋地となつたものであつたが、その際同番の一および同番の二上の原判示B通路が開設され、訴外山本は右B通路を通行して公路に出入しえたというのであつて、このように、九八六番の五は所有者を同一にする九八九番の三およびB通路を経て公路に通じていたものである以上、九八六番の五はいわゆる袋地とはいえず、したがつて、上告人が九八六番の五のためさらに所論のように囲繞地通行権を有するいわれはないものというべきである。そして、上告人が所論のように九八六番の五の地上に新たに建物を建築するため原判示B通路をもつてしては建築基準法に定める道路の要件をみたさないというのであれば、九八九番の一および同番の二の所有者に対してB通路の拡張開設を求める権利を有するか否かは格別、原判示A通路について囲繞地通行権を有するにいたるものではない。右と見解を同じくする原審の判断は相当であり、論旨は、独自の見解に立つて原審の適法にした判断を非難するものであつて、採用しえない。
よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 大隅健一郎)